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分院開設・管理者に関するよくある質問(FAQ)

ひと目でわかる!医療法人 分院開設ガイド

医療法人の分院開設・管理者変更について、よく寄せられる質問を行政書士が解説します。

分院開設・管理者に関するFAQ(手続き・スケジュール・必要書類)

Q. 分院開設に必要な手続きの全体像を教えてください。

医療法人が分院を開設する場合、大きく分けて「医療法人内部の意思決定・認可手続き」と「行政機関への届出・申請手続き」の2つの段階を経ることになります。

まず、医療法人内部の手続きとして、社員総会で分院開設の決議を行います。分院の開設は定款に記載された「診療所の名称及び開設場所」の変更を伴うため、社員総会の特別決議が必要です。あわせて、分院の管理者となる医師の選任決議も行います。

次に、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県に対して、定款変更認可申請を行います。この申請では、分院の事業計画書、収支予算書、資金調達計画、賃貸借契約書、平面図などの書類を提出し、審査を受けます。審査期間は都道府県によって異なりますが、おおむね1か月から2か月程度を要します。

定款変更の認可が下りたら、分院を開設し、開設後10日以内に分院所在地を管轄する保健所へ診療所開設届を提出します。その後、保険診療を行うために、地方厚生局に対して保険医療機関指定申請を行います。保険医療機関の指定は毎月1日付で行われ、申請には締切日が設けられていますので、開院希望日に間に合うよう計画的に進める必要があります。また、算定を予定している診療報酬の内容に応じて、施設基準の届出も必要となります。

このほか、エックス線装置を設置する場合は保健所への届出、麻薬を使用する場合は都道府県への麻薬施用者免許申請など、診療内容に応じた届出・申請も発生します。

分院開設の手続きは、定款変更認可、開設届、保険医療機関指定申請という順序で進める必要があり、それぞれに審査期間や締切日があります。希望する開院日から逆算して、余裕をもったスケジュールを組むことが成功のポイントです。

Q. 分院開設に必要な資金・財務要件を教えてください。

医療法人が分院を開設する際には、開設に必要な資金を確保していることはもちろん、都道府県の定款変更認可審査において財務面の健全性が審査されます。

まず、分院開設に必要な資金としては、内装工事費、医療機器購入費、備品購入費などの設備資金に加えて、開院後の運転資金があります。診療報酬は診療月の翌々月に入金されるため、収入が安定するまでの間、人件費や家賃、材料費などを賄うための運転資金が必要です。一般的には、少なくとも2か月分程度の運転資金を確保しておくことが望ましいとされています。

資金の調達方法としては、医療法人の内部留保を充てる方法、金融機関からの借入、医療機器等のリース契約の活用などがあります。複数の方法を組み合わせることも多く、それぞれの資金調達方法について、定款変更認可申請の際に資金調達計画書として提出します。

都道府県の認可審査では、分院開設後も医療法人全体として安定した経営が維持できるかどうかが重視されます。具体的には、本院の経営状況が健全であること、分院の収支計画が現実的であること、借入金がある場合は無理のない返済計画となっていることなどが審査されます。直近の決算書類で大幅な赤字が続いている場合や、過大な負債を抱えている場合には、分院開設の認可が下りにくくなることもあります。

申請にあたっては、事業計画書、収支予算書、資金調達計画書、直近2期分程度の決算書類などを提出し、分院開設の財務的な実現可能性を示すことが求められます。収支予算書については、患者数や診療単価の見込みに合理的な根拠があるか、経費の見積もりが適切かといった点も確認されますので、慎重に作成する必要があります。

分院開設を検討される際は、早い段階で資金計画を立て、必要に応じて金融機関や税理士とも相談しながら準備を進めることをお勧めいたします。

Q. 他の都道府県に分院を開設するのは難しいですか?

医療法人が主たる事務所の所在地とは異なる都道府県に分院を開設することは、法律上認められており、実際に多くの医療法人が行っています。結論から申し上げると、手続き自体が特別に難しくなるということはありません。

定款変更認可申請は、分院がどこに所在する場合であっても、医療法人の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県に対して行います。他の都道府県に分院を開設する場合には、認可権者である都道府県が分院所在地の都道府県に照会を行う場合がありますが、これによって認可が下りにくくなるということは通常ありません。

同一都道府県内に分院を開設する場合との実務上の主な違いは、定款変更認可後の届出・申請手続きを、分院所在地を管轄する行政機関に対して行う必要があるという点です。診療所開設届は分院所在地の保健所へ、保険医療機関指定申請は分院所在地を管轄する地方厚生局へ提出することになります。そのため、分院が遠方の場合には、現地の行政機関への届出や事前相談のために移動が必要となることがあります。

また、都道府県や保健所によって、届出書類の様式や添付書類の運用が若干異なることがありますので、事前に分院所在地の担当窓口に確認しておくとスムーズです。

Q. 分院の管理者要件を教えてください。

分院の管理者は、医師または歯科医師であることが必要です。これは医療法に定められた要件であり、診療所には必ず管理者を置かなければなりません。以下、よくご質問いただくポイントについてご説明いたします。

まず、理事長と管理者の関係についてです。医療法第46条の6第1項では、医療法人の理事長は医師または歯科医師である理事のうちから選出することとされています。一方、理事長が管理者を兼任しなければならないという法律上の規定はありませんが、実務上は理事長が本院の管理者を兼ねているケースが多く見られます。分院を開設する場合には、分院の管理者として理事長とは別の医師または歯科医師を選任するのが一般的です。

次に、管理者の常勤性についてです。管理者は診療所の管理運営全般について責任を持つ立場であるため、常勤で勤務することが原則とされています。常勤の基準については法令上明確な定めはありませんが、一般的には週32時間以上、または週4日以上の勤務が目安とされています。ただし、運用は都道府県や保健所によって異なる場合がありますので、事前に確認されることをお勧めいたします。管理者が常勤で勤務できない場合には、開設届の審査において指摘を受けることがありますので注意が必要です。

最後に、複数施設の管理者兼任についてです。医療法では、病院または診療所の管理者は、原則として他の病院や診療所の管理者を兼任することはできないとされています。したがって、本院の管理者である理事長が分院の管理者を兼ねることは、原則としてできません。ただし、許可を受けた場合には、例外的に兼任が認められることがあります。この許可が認められるのは、へき地など医師の確保が困難な地域である場合など、管理上支障がないと認められる場合に限られます。許可権者は、診療所の所在地が保健所設置市や特別区の区域内にある場合は市長または区長、それ以外の地域では都道府県知事となります。兼任許可を希望される場合は、事前に所轄の窓口にご相談ください。

なお、医療法第46条の5第1項により、医療法人が開設する病院または診療所の管理者は理事に加えなければならないとされています。そのため、分院開設にあたっては、管理者の理事就任に伴う役員変更手続きもあわせて必要となります。

分院の管理者をどなたにお願いするかは、分院開設の計画段階から検討しておくべき重要な事項です。管理者候補の先生の勤務状況や他施設との兼務の有無なども含めて、早めに確認されることをお勧めいたします。

Q. 管理者の欠格事由を教えてください。

診療所の管理者となるためには、医師または歯科医師であることが必要ですが、医師または歯科医師であれば誰でも管理者になれるわけではありません。医療法では、管理者となることができない者(欠格事由)が定められています。

医療法第6条では、医業または歯科医業の停止を命ぜられている者は、病院、診療所または助産所を管理することができないと規定されています。医業停止処分は、医師が医師法に違反した場合や、医師としての品位を損なう行為があった場合などに、厚生労働大臣から下される行政処分です。この処分を受けている期間中は、たとえ医師免許を保有していても、診療所の管理者になることはできません。

また、医師または歯科医師の免許を取得するための要件として、医師法および歯科医師法において欠格事由が定められています。具体的には、心身の障害により業務を適正に行うことができない者、麻薬・大麻・あへんの中毒者、罰金以上の刑に処せられた者、医事に関し犯罪または不正の行為のあった者などは、免許を与えないことがあるとされています。これらに該当し免許を取得できない場合や、免許の取消処分を受けた場合には、そもそも医師または歯科医師ではなくなるため、管理者となることもできません。

なお、過去に医業停止処分等を受けた経歴がある場合、処分期間が終了して法律上の欠格事由に該当しなくなったとしても、実務上は管理者として認められるまでのハードルが高くなります。診療所開設届の審査において、処分が終了したことを証明する書類の提出を求められる場合があるほか、行政担当者から詳細な経緯の説明を求められることもあります。過去に処分歴のある先生を管理者として選任することを検討される場合は、事前に所轄の保健所等にご相談されることをお勧めいたします。

分院の管理者を選任される際には、候補となる先生がこれらの欠格事由に該当しないことをご確認ください。

Q. 保険医療機関の指定申請の時期や期限を教えてください。

保険診療を行うためには、診療所を開設した後、地方厚生局に対して保険医療機関の指定申請を行う必要があります。この申請には締切日が設けられており、スケジュール管理が重要となります。

保険医療機関の指定は、原則として毎月1日付で行われます。申請の締切日は、指定を受けようとする月の前月に設定されており、具体的な締切日は地方厚生局によって異なります。たとえば、関東信越厚生局の東京事務所では、指定希望月の前月10日頃が締切となっています。他の厚生局や事務所では締切日が異なりますので、分院所在地を管轄する厚生局の締切日を事前に確認しておくことが大切です。

申請にあたっては、保健所で診療所開設届が受理されていることが前提となります。開設届を提出する前に保険医療機関の指定申請を行うことはできませんので、開設届の提出時期も含めて逆算してスケジュールを組む必要があります。

注意が必要なのは、新規開設の場合、保険医療機関の指定日を遡ることはできないという点です。たとえば、4月1日に開院したものの、指定申請の締切に間に合わず4月1日付の指定が受けられなかった場合、5月1日付の指定となり、4月中は保険診療を行うことができません。この間に診療を行った場合は自費診療として扱うことになりますので、開院日と指定日を合わせるためには、申請締切日から逆算した準備が不可欠です。

なお、地方厚生局によっては、診療所開設届の提出前であっても事前相談や事前申請を受け付けている場合があります。開院スケジュールがタイトな場合には、早めに厚生局の窓口に相談されることをお勧めいたします。

Q. 診療所の構造設備基準を教えてください。

診療所を開設するにあたっては、医療法および医療法施行規則に定められた構造設備基準を満たす必要があります。保健所の審査では、これらの基準を満たしているかどうかが確認されます。

医療法施行規則第16条では、診療所に必要な構造設備として、診察室および処置室を有すること、適当な換気・採光・照明・防湿・保安・避難および清潔を保持するための設備を有することなどが定められています。また、消毒設備や清潔な給水設備も必要です。

診察室や待合室の面積については、多くの保健所の手引きにおいて、診察室は9.9㎡以上、待合室は3.3㎡以上が望ましいとされています。これらは法令上の絶対的な要件ではありませんが、保健所の指導基準として広く運用されていますので、物件選定の際にはこの数値を目安にされることをお勧めいたします。

エックス線装置を設置する場合は、放射線防護のための構造設備基準を満たす必要があります。具体的には、エックス線診療室の壁や床、天井に適切な遮蔽物を設けること、操作者が被ばくを防止できる構造であることなどが求められます。エックス線装置の設置届は保健所への届出事項となっており、装置の設置前に構造設備の図面等を提出して審査を受けることになります。

有床診療所の場合は、無床診療所よりも多くの構造設備基準が適用されます。病室の床面積、廊下の幅、階段の構造、防火設備など、入院患者の安全を確保するための詳細な基準が定められています。

このほか、建築基準法や消防法など、医療法以外の法令による規制も受けます。用途地域によっては診療所を開設できない場合や、建物の用途変更手続きが必要となる場合もあります。物件を契約する前に、医療法の構造設備基準だけでなく、建築基準法や消防法上の要件も含めて確認しておくことが、手戻りを防ぐポイントです。

Q. 分院経営を安定させるコツを教えてください。

分院経営を安定させるためには、開設前の準備段階から運営開始後まで、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。

まず、開設前の段階では、立地選定と事業計画の精度が重要です。分院を開設する地域の人口構成、競合となる医療機関の状況、交通アクセスなどを十分に調査し、その地域で求められる医療ニーズを把握したうえで診療科目や診療内容を検討することが必要です。また、開院後の患者数の立ち上がりは想定よりも緩やかになることが多いため、収支計画は保守的に見積もり、十分な運転資金を確保しておくことが安定経営の基盤となります。

次に、管理者の選任も重要なポイントです。分院の管理者となる医師は、診療面だけでなく、スタッフのマネジメントや患者対応においても中心的な役割を担います。理事長が常に現場にいることができない分院では、管理者の力量が経営に大きく影響しますので、信頼できる医師を管理者として迎えることが大切です。管理者との間で、診療方針や経営目標について十分にすり合わせを行い、本院と分院の連携体制を構築しておくことも欠かせません。

運営面では、本院と分院の間で情報共有や業務の標準化を図ることが効率的な経営につながります。診療マニュアルや接遇の基準を統一することで、どちらの施設でも同じ品質の医療サービスを提供できる体制を整えることができます。また、経理や労務管理などのバックオフィス業務は本院で一元管理することで、コスト削減と業務効率化を図ることができます。

さらに、分院開設後も定期的に収支状況を確認し、必要に応じて診療体制や人員配置の見直しを行うことが重要です。開設当初の計画どおりに進まないことも少なくありませんので、柔軟に対応できる体制を整えておくことが、長期的な安定経営につながります。

Q. ひとつの医療法人で、分院をいくつまで開設できますか?

医療法上、医療法人が開設できる診療所の数に上限は設けられていません。したがって、法令上は何か所でも分院を開設することが可能です。

ただし、分院を開設するたびに都道府県への定款変更認可申請が必要となり、その審査においては、医療法人全体としての経営の健全性や管理体制が確認されます。分院の数が増えるほど、それぞれの施設を適切に管理運営できる体制が整っているか、財務基盤が十分であるかといった点がより厳しく審査される傾向にあります。

また、実務上の制約として、各分院に管理者となる医師を配置する必要があります。管理者は原則として常勤であり、かつ他の診療所の管理者を兼任することができませんので、分院を増やすためには、その数に応じた管理者を確保しなければなりません。信頼できる管理者の確保は、分院展開における現実的なハードルのひとつとなります。

さらに、分院が増えるにつれて、本院との連携体制の維持、スタッフの採用・教育、経理や労務管理の負担など、組織としてのマネジメントの複雑さも増していきます。経営資源が分散することで、個々の施設の運営が手薄になるリスクもありますので、医療法人全体としての管理体制を踏まえた計画的な展開が求められます。

分院数が多くなった医療法人では、本部機能を強化して各分院を統括する体制を整えることが一般的です。具体的には、経理・人事・労務といったバックオフィス業務を本部で一元管理したり、エリアごとに統括責任者を配置して複数の分院を束ねる体制を構築したりする方法があります。このような体制を整えることで、理事長がすべての分院を直接管理する負担を軽減し、組織として持続可能な運営を実現することができます。

一方で、分院数が増えすぎて管理が行き届かなくなった場合には、組織の再編を検討することも選択肢となります。たとえば、一部の分院を別の医療法人として独立させる方法や、採算が合わない分院については閉院や譲渡を検討する方法があります。医療法人の分割については、医療法上の手続きとして認められており、一定の要件を満たせば、既存の医療法人から一部の事業を切り離して新たな医療法人を設立することが可能です。また、分院を他の医療法人に譲渡する場合には、事業譲渡や合併といったM&Aの手法を活用することになります。

分院展開は医療法人の成長戦略として有効ですが、拡大のペースが速すぎると経営基盤が不安定になるリスクもあります。各分院の経営状況を定期的に確認し、必要に応じて拡大・縮小の判断を行いながら、無理のない範囲で着実に展開していくことが、長期的な安定経営につながります。

Q. 管理者が急に退職・死亡した場合、診療を継続できますか。届出期限はいつまでですか。

分院の管理者が急に退職または死亡した場合でも、速やかに新たな管理者を選任し、必要な届出を行うことで、診療を継続することは可能です。ただし、管理者が不在のまま診療を続けることは認められていませんので、迅速な対応が求められます。

医療法では、診療所には必ず管理者を置かなければならないと定められています。管理者は診療所の管理運営について責任を負う立場であり、管理者が不在の状態は法令上想定されていません。そのため、管理者の退職や死亡が生じた場合には、可能な限り速やかに後任の管理者を選任する必要があります。

後任の管理者が決まりましたら、医療法人内部の手続きとして、理事会において新たな管理者の選任決議を行います。また、新たな管理者が理事でない場合には、理事への就任手続きもあわせて必要となります。

届出については、管理者の変更は診療所開設届の届出事項の変更にあたりますので、変更が生じた日から10日以内に、所轄の保健所へ届出を行う必要があります。届出に際しては、新たな管理者の医師免許証の原本提示が求められる場合がほどんどです。届出が遅れた場合には、保健所から指導を受けることがありますので、届出期限には十分ご注意ください。

なお、管理者の急な不在という事態に備えて、日頃から後任となりうる医師の候補を想定しておくことが重要です。分院に勤務する常勤医師の中から後任候補を確保しておくか、外部から招聘できる体制を整えておくことが望ましいといえます。

管理者の急な退職や死亡は予測が難しい事態ですが、万が一の場合に診療を中断することなく継続できるよう、平時から備えておくことをお勧めいたします。

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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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