分院開設の保健所手続きのポイント3つ

医療法人が分院を開設する際の保健所手続きには、いくつかの重要なポイントがあります。
本稿では、特に重要な3つのポイント(手続きの流れ、原本確認、押印の要否)について、実務的な観点から解説していきます。
手続きの流れについて
保健所手続きの全体像
保健所での手続きは、大きく分けて次の3つのステップがあります。
- 診療所開設許可申請
- 実地検査
- 診療所開設届
分院開設の場合、定款変更認可がおり次第、司法書士が登記申請を行い、その後に保健所での手続きを行います。
例えば、9月1日開設で10月1日から保険診療開始を予定している場合、8月中旬頃までに診療所開設許可申請を行う必要があります。
保健所での手続きが終了した後、9月10日頃までに厚生局での手続きを行うことになりますので、保健所での手続きは余裕をもって進めることが重要です。
診療所開設許可申請
診療所開設許可申請は、開設予定日の約2週間前までに行う必要があります。
例えば、9月1日開設であれば、8月中旬までに申請を完了させる必要があります。
申請の準備
申請にあたっては、一般的に、以下の書類を準備します。
- 診療所開設許可申請書
- 添付書類
– 定款(変更後のもの)
– 法人の登記事項証明書(分院追加後のもの)
– 土地・建物の登記事項証明書
– 賃貸借契約書の写し
– 平面図
– エックス線装置関連書類(設置する場合)
申請書類の作成部数
保健所の手続き書類は4セット作成することをお勧めします。
- 1部目:保健所提出用
- 2部目:法人控え用
- 3部目:業者への提出用予備
- 4部目:厚生局提出用
医療法人以外の方(行政書士など)が手続きをする場合は、さらに1セット(5セット目)を作成します。
実地検査
実地検査の時期は保健所によって異なりますが、大きく3つのパターンがあります。
一般的なパターン
診療所開設許可申請後、実地検査が行われ、問題がなければ許可が下ります。
例)
- 8月中旬:診療所開設許可申請
- 8月20日頃:実地検査
- 8月末:許可
- 9月1日:診療所開設届
タイトなパターン
書類上の許可が先に下り、その後に実地検査を行います。
- 8月中旬:診療所開設許可申請
- 8月末:書類上の許可
- 9月1日:診療所開設届
- 9月3日頃:実地検査
事後検査のパターン
すべての手続きが完了した後に実地検査を行います。
- 8月中旬:診療所開設許可申請
- 8月末:許可
- 9月1日:診療所開設届
- 9月25日頃:実地検査
診療所開設届
診療所開設許可が下り次第、診療所開設届を提出します。
この届出では、主に以下の内容を届け出ます。
- 管理者情報
- 診療日時
- 従事者情報
- その他運営に関する事項
原本確認について
原本確認の重要性
保健所への各種申請・届出では、提出書類の写しに加えて、原本の確認が必要になることがあります。
原本確認は、提出された写しが真正なものであることを確認するために行われます。
原本確認が必要な主な書類
医師関連書類
以下の書類については、原本の提示が必要になる場合が多くあります。
- 医師免許証
– 管理者の医師免許証
– 勤務医の医師免許証 - 臨床研修修了登録証
– 医師の場合:平成16年4月以降登録の方
– 歯科医師の場合:平成18年4月以降登録の方
– 厚生労働省発行のものが必要(大学病院等の修了証では不可)
建物関連書類
賃貸借契約書については、保健所によって原本確認の要否が異なります。
- 原本確認が必要な場合
– 契約書の全ページの原本を提示
– 契約書に付随する覚書等も含む - 写しのみで可能な場合
– 原本証明付きの写しを提出
– 契約書の全ページの写しを提出
定款変更認可書
まれに、定款変更認可書の原本確認が必要な保健所もあります。
この場合、以下の点に注意が必要です。
- 司法書士への認可書原本の引き渡し前に保健所での確認を済ませる
- 登記完了後、認可書原本の返却を受けてから保健所確認を行う
- 原本確認のタイミングを事前に保健所に確認する
原本確認のタイミング
原本確認のタイミングは、保健所によって異なります。
申請・届出時
- 窓口での申請・届出時に原本を持参
- その場で原本との照合を実施
実地検査時
- 実地検査の際に原本を準備
- 検査官が現地で確認
別途指定日
- 保健所が指定する日時に原本を持参
- 予約制で原本確認を実施
原本確認における注意点
事前確認
必ず以下の点を事前に保健所に確認しましょう。
- どの書類の原本確認が必要か
- いつ原本を持参すればよいか
- 原本の一時預かりは可能か
原本の準備
- 原本の所在を早めに確認
- 紛失している場合の再発行手続きを想定
- 遠方に原本がある場合の取り寄せ時間を考慮
スケジュール管理
- 原本確認の時期を踏まえた全体スケジュールの作成
- 原本が必要な他の手続きとの調整
- 予備日の設定
押印の要否について
押印要否の確認
基本的な考え方
押印については、行政手続きの簡素化に伴い、従来必要とされていた押印が不要となっているケースが増えています。
ただし、保健所によって取り扱いが異なりますので、必ず事前に確認が必要です。
確認のポイント
以下の点について、保健所に確認しましょう。
- どの書類に押印が必要か
- どの印鑑を使用するか(実印/認印)
押印が必要な主な書類
医療法人関連
- 診療所開設許可申請書
- 診療所開設届
- 各種誓約書
管理者関連
- 管理者の押印
– 管理者就任承諾書
– 履歴書
押印準備の実務
押印の手順
- 押印前の確認事項
– 書類の記載内容の最終確認
– 押印箇所の確認
– 使用する印鑑の確認 - 押印時の注意点
– 押印箇所のズレや欠けに注意
– 複数部数がある場合は同一の位置に押印
– 訂正がある場合は訂正印の準備
実務上の留意点
事前準備
- 必要な印鑑のリストアップ
- 取得に要する時間の見積もり
スケジュール管理
- 押印が必要な関係者のスケジュール調整
- 書類の作成から提出までの時間管理
書類の管理
- 押印済み書類の保管方法
- 原本と写しの区別
- 差し替えが必要になった場合の対応
まとめ
保健所での手続きを円滑に進めるためには、これら3つのポイント(手続きの流れ、原本確認、押印の要否)を十分に理解し、適切に対応することが重要です。特に以下の点に注意しましょう。
- 手続きの流れについては、保健所ごとの特徴を把握し、十分な準備期間を確保する
- 原本確認については、必要書類とタイミングを事前に確認し、計画的に準備する
- 押印については、必要な印鑑を早めに手配する。
なお、これらの要件は保健所によって異なる場合がありますので、必ず事前に確認するようにしましょう。
