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医療法人が法人名や診療所名を変更する場合のQ&A・よくある質問と回答

よくある質問

医療法人が法人名や診療所名を変更しようとする際には、様々な疑問や不安が生じるものです。

本稿では、実際によく寄せられる質問とその回答をQ&A形式で解説します。

手続きの基本から細かな実務上の疑問まで、幅広く対応していますので、名称変更を検討されている医療法人の方々にお役立ていただければ幸いです。

名称変更の基本に関する質問

Q1-1. 医療法人の法人名と診療所名は必ず一致させる必要がありますか?
A1-1. 法人名と診療所名を一致させる必要はありません。
医療法人の名称(例:医療法人社団○○会)と、その医療法人が開設する診療所の名称(例:△△クリニック)は別のものです。
実際に多くの医療法人では、法人名と診療所名が異なっています。
法人名は「医療法人社団○○会」のような形式が一般的ですが、診療所名はより患者に親しみやすい名称を選ぶことが多いです。
Q1-2. 法人名だけ、または診療所名だけを変更することは可能ですか?
A1-2. はい、可能です。
法人名のみの変更、診療所名のみの変更、両方の変更のいずれも可能です。
ただし、いずれの場合も定款変更認可申請が必要です。変更内容によって具体的な手続きが異なります。
法人名のみの変更では定款の「名称」の条項(通常第1条)を、診療所名のみの変更では「本社団の開設する診療所の名称及び開設場所」の条項(通常第4条)を変更することになります。
Q1-3. 名称変更にかかる期間はどのくらいですか?
A1-3. 定款変更認可申請から実際に新名称で診療を開始するまで、通常2~3ヶ月程度かかります。
具体的には、定款変更認可申請の素案提出から認可まで1~2ヶ月、その後変更登記や保健所・厚生局への届出に2~3週間程度かかります。
これに加えて、看板や印刷物等の準備期間も考慮する必要があります。
スケジュールに余裕を持って計画することをお勧めします。
Q1-4. 名称変更にかかる費用の目安を教えてください。
A1-4. 名称変更にかかる費用は、手続き費用と実務変更費用に分けられます。
手続き費用としては、専門家に外注する場合は、定款変更認可申請と登記費用などで、合計30万円程度です。
実務変更費用としては、新しい印鑑作成費用(3~5万円)、看板変更費用(10~50万円)、印刷物変更費用(5~20万円)などがあり、変更の規模によって大きく異なります。
全体では数十万円から100万円以上になることもあります。

名称の選定に関する質問

Q2-1. 新しい法人名や診療所名を選ぶ際の制限はありますか?
A2-1. 医療法人の名称には、「医療法人」という文字を入れる必要があります。
また、社団医療法人の場合は「医療法人社団○○」、財団医療法人の場合は「医療法人財団○○」となりますが、都道府県等によっては、「社団」や「財団」を省略可能な場合もあります。
診療所名については特定の形式はありませんが、医療広告ガイドラインに沿った名称である必要があります。
具体的には、虚偽の表現、誇大な表現、他の医療機関と比較する表現などを含まないことが求められます。
また、同一地域内で同一または極めて類似した名称の医療機関がある場合は、名称変更が認められない可能性があります。
Q2-2. 診療所名に診療科名を含めることはできますか?
A2-2. 診療所名に診療科名を含めることは可能です。
ただし、実際に標榜している診療科名のみ含めることができます。
例えば「○○内科クリニック」という名称にする場合は、実際に内科を標榜していることが前提です。
また、標榜できる診療科名は医療法で定められていますので、それに従う必要があります。複数の診療科を標榜している場合でも、名称に含めるのは主たる診療科が一般的です。
Q2-3. 既存の企業名や商品名と類似した名称を使用できますか?
A2-3. 著名な企業名や商品名と同一または極めて類似した名称を使用すると、商標権侵害のリスクがあります。
特に大手企業のブランド名や商品名に類似した名称は避けるべきです。
新しい名称を検討する際は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)での商標検索や、インターネット検索による著名企業・商品名の確認をお勧めします。
不明な点がある場合は、弁理士に相談するとよいでしょう。
Q2-4. 地名を含む名称(例:○○市△△クリニック)は使用できますか?
A2-4. 地名を含む名称は使用可能です。
ただし、その地名と実際の所在地が一致していることが望ましいです。
例えば「新宿クリニック」という名称なら、実際に新宿区または新宿駅周辺に所在していることが望ましいです。
地名が実際の所在地と大きく異なると、患者に誤解を与える可能性があります。
また、行政区画の名称(○○市、△△区など)を含む場合は、公的機関と誤解されないよう注意が必要です。

定款変更認可申請に関する質問

Q3-1. 定款変更認可申請の前に事前相談は必要ですか?
A3-1. 都道府県等によってことなります。
事前相談をすることで、必要書類や手続きの流れ、申請から認可までの期間の目安などを確認でき、後々の手戻りを防げます。
特に保健所への相談は重要です。
診療所名を変更する場合、同一地域内に類似名称の医療機関がないかなどを確認できます。
また、新しい名称について事前に問題がないか確認しておくことで、申請後の修正を避けられます。
Q3-2. 定款変更認可申請の社員総会決議は理事会決議で代用できますか?
A3-2. 代用できません。定款変更には必ず社員総会の決議が必要です。
医療法人の定款には通常「定款の変更は社員総会の議決を経なければならない」と規定されており、これは医療法の規定に基づくものです。
したがって、理事会決議だけでは定款変更はできません。
社員総会を開催し、定足数(通常は総社員の過半数)を満たした上で決議を行う必要があります。
また、社員総会議事録は定款変更認可申請の添付書類となります。
Q3-3. 定款変更認可申請の素案提出と本申請の違いは何ですか?
A3-3. 素案提出(事前審査)は、本申請の前に書類の内容を確認してもらうための手続きです。
この段階では押印不要のものが多く、書類のコピーでも構いません。
都道府県等の担当者が内容を確認し、必要に応じて修正指示を出します。
本申請は、事前審査を経て内容が確定した後に行う正式な申請です。
理事長印の押印や必要書類の原本提出が必要になります。
素案提出から本申請までの間に、指摘事項への対応や押印の手配などを行います。

登記・保健所・厚生局の手続きに関する質問

Q4-1. 定款変更認可後、登記はいつまでに行う必要がありますか?
A4-1. 定款変更認可後、2週間以内に変更登記を申請する必要があります。
これは組合等登記令第2条に基づく規定です。
期限を過ぎると過料の対象となる可能性がありますので注意が必要です。
登記申請は、医療法人の主たる事務所の所在地を管轄する法務局で行います。
一般的には司法書士に依頼しますが、理事長自身が申請することも可能です。
Q4-2. 診療所名の変更は必ず保健所に届け出る必要がありますか?
A4-2. はい、必ず届け出る必要があります。
診療所名を変更した場合は、変更後速やかに保健所に「診療所名称変更届」を提出しなければなりません。
また、法人名を変更した場合も「診療所開設者の名称変更届」を提出する必要があります。
複数の診療所を開設している場合は、それぞれの診療所を管轄する保健所すべてに届出が必要です。
保健所への届出なしに名称を変更して診療を行うことは、医療法違反となる可能性があります。
Q4-3. 保険医療機関の届出を忘れた場合、どうなりますか?
A4-3. 厚生局への届出を忘れると、保険診療に影響が出る可能性があります。
法人名や診療所名を変更した場合は、変更後速やかに管轄の厚生局に「保険医療機関届出事項変更(異動)届」を提出する必要があります。
届出が遅れると、保険診療報酬の支払いに影響が出る可能性があります。
特に診療所名変更の場合、旧名称でのレセプト請求ができなくなるため、早めに届出を行うことが重要です。
Q4-4. 複数の診療所を持つ医療法人の場合、一部の診療所名だけを変更できますか?
A4-4. はい、可能です。
複数の診療所を持つ医療法人の場合、一部の診療所名だけを変更することができます。
この場合も定款変更認可申請が必要で、定款の「本社団の開設する診療所の名称及び開設場所」の条項中、該当する診療所の名称のみを変更します。
ただし、複数の診療所名を同時に変更する場合は、一括して申請するほうが効率的です。

実務的な変更に関する質問

Q5-1. 名称変更に伴い印鑑も変更する必要がありますか?
A5-1. 法人名を変更する場合は、印鑑も変更する必要があります。
理事長印、法人角印、銀行印など、法人名が入った印鑑はすべて作り直す必要があります。
特に銀行印は名義変更手続きに必要なため、早めに準備しておくとよいでしょう。
一方、診療所名のみを変更する場合は、法人印鑑の変更は不要です。
ただし、診療所名が入った角印やゴム印は作り直す必要があります。
Q5-2. 名称変更に伴い診察券も変更する必要がありますか?
A5-2. 診療所名を変更する場合は、診察券も変更することが望ましいです。
ただし、すべての患者の診察券を一度に変更するのは現実的ではないため、新名称に変更後、来院した患者に順次新しい診察券を発行するという方法が一般的です。
この場合、一定期間は旧診察券も使用可能とする運用が現実的です。
法人名のみを変更する場合で、診察券に法人名が記載されていなければ、診察券の変更は必ずしも必要ありません。
Q5-3. 名称変更に伴いウェブサイトやメールアドレスも変更する必要がありますか?
A5-3. 診療所名を変更する場合は、ウェブサイトの内容更新は必須です。
特にサイト内のクリニック名称、ロゴ、写真などは速やかに更新する必要があります。
また、ドメイン名に診療所名が含まれている場合(例:www.〇〇clinic.jp)は、新しいドメイン名の取得も検討すべきです。
メールアドレスも同様で、アドレスに診療所名が含まれている場合は変更を検討しましょう。
ただし、急にドメインやメールアドレスを変更すると混乱を招く可能性があるため、一定期間は旧ドメイン・旧メールアドレスも併用することをお勧めします。
Q5-4. 名称変更を周知するタイミングはいつが適切ですか?
A5-4. 患者への周知は、定款変更認可申請の事前審査が完了し、変更がほぼ確実になった段階から開始するのが適切です。
具体的には、変更日の1ヶ月前から院内掲示や診察時の説明を開始し、変更日の2~3週間前からは案内文書の配布やウェブサイトでの告知を行うとよいでしょう。
特に定期的に通院している患者には丁寧な説明が必要です。
また、連携医療機関や取引先への通知は、変更日の1ヶ月前頃に行うのが一般的です。
周知期間が短すぎると患者の混乱を招く恐れがありますので、十分な期間を設けることが重要です。

まとめ

本稿では、医療法人の法人名や診療所名の変更に関するよくある質問とその回答を紹介しました。
名称変更は一見単純な手続きのように思えますが、実際には多くの準備と手続きが必要です。本稿が皆様の疑問解消と円滑な名称変更のお役に立てば幸いです。

なお、本稿の内容は一般的な回答であり、具体的な手続きは都道府県等によって異なる場合があります。
不明な点がある場合は、所管の行政機関に確認することをお勧めします。

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事務所代表・記事監修
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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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