HOME医療法人 行政手続きブログ > 診療所移転の厚生局手続き(保険医療機関指定申請後の流れ)

診療所移転の厚生局手続き(保険医療機関指定申請後の流れ)

フローチャート

診療所移転の厚生局手続きにおいて、保険医療機関指定申請書を提出した後の流れと対応について詳しく解説します。

この申請後の手続きや対応を適切に行わなければ、せっかく移転した診療所での保険診療に支障をきたす可能性があります。

本稿では、保険医療機関指定申請後の流れに焦点を当て、詳細に解説します。

保険医療機関指定申請後の全体の流れ

まず、保険医療機関指定申請後の全体の流れを確認しましょう。

例として、10月1日に移転し、10月10日までに厚生局に申請を行った場合のスケジュールを見ていきます。

  1. 申請書提出(10月10日までに厚生局)
  2. 国保連合会・支払基金への書類提出(書類到着後速やかに)
  3. 医療機関コードの判明(10月下旬)
  4. 保険医療機関指定通知書の受領(11月1日頃)
  5. 10月診療分の請求(11月上旬)

この流れを念頭に置きながら、各ステップの詳細を解説します。

国保連合会・支払基金への書類提出

書類の到着

保険医療機関指定申請後、数日から1週間程度で、国民健康保険団体連合会(以下、国保連合会)と社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金)から、それぞれの手続き書類が届きます。

これらの書類は、厚生局での手続き完了後に自動的に送付されるわけではなく、厚生局から国保連合会と支払基金に情報が提供され、それを受けて各機関から書類が送付されます。

一部の厚生局では、申請時に窓口で国保連合会と支払基金の書類を手渡すこともあります。
その場合は、その場で記入して提出するか、後日郵送することになります。

書類の内容と記入方法

国保連合会と支払基金の書類は、主に以下のような内容です。

  • 新規登録届:新しい医療機関としての登録に必要な情報を記入
  • 口座振替依頼書:診療報酬の振込先口座情報を記入
  • 請求書・総括表の提出方法に関する調査票:レセプト請求の方法を記入
  • その他の調査票:各種加算や施設基準に関する調査票等

これらの書類には、診療所の基本情報(名称、所在地、電話番号など)、管理者情報、レセプト請求方法(オンライン・電子媒体・紙)、口座情報などを記入します。

記入にあたっては、厚生局に提出した保険医療機関指定申請書と内容を一致させることが重要です。
特に診療所名称や所在地は、定款の記載と一字一句違わないように注意してください。

書類の提出期限と方法

これらの書類は、原則として速やかに提出する必要があります。
期限が明記されている場合は、必ずその期限内に提出してください。
期限が数日後に迫っている場合もありますので、到着次第すぐに対応することが重要です。

提出方法は、郵送または窓口持参が一般的です。特に口座振替依頼書などの原本が必要な書類は、郵送で提出することになります。
提出先は書類に記載されていますので、確認の上、送付してください。

注意点

万が一、国保連合会や支払基金からの書類が届かない場合は、10日程度経っても届かない場合は、各機関に問い合わせてみましょう。
厚生局での手続きが完了しているにもかかわらず、情報が適切に伝達されていない可能性があります。

また、口座振替依頼書には金融機関の届出印が必要ですので、事前に準備しておきましょう。
口座情報は正確に記入してください。間違いがあると診療報酬の入金が遅れる原因となります。

医療機関コードの判明

医療機関コードとは

医療機関コードは、保険医療機関を識別するための固有の番号です。
レセプト請求や処方箋発行など、保険診療に関するあらゆる場面で使用される重要な番号です。

移転に伴い新しい保険医療機関の指定を受けるため、医療機関コードも変更になります。
この新しい医療機関コードを確認することが、保険診療を継続するために不可欠です。

医療機関コードの確認方法

新しい医療機関コードは、通常、厚生局の締切日(例えば毎月10日)に間に合うように申請した場合、その月の下旬に判明します。

例えば、10月10日締切に間に合うように申請した場合、10月下旬に判明します。

医療機関コード判明後の対応

新しい医療機関コードが判明したら、速やかに以下の対応を行います。

  • レセプトコンピューターの設定変更:レセコン会社に連絡し、新しい医療機関コードの設定を依頼します。
  • 処方箋への記載:処方箋に新しい医療機関コードを記載します。
  • 関連業者への連絡:検査センターなど関連業者に新しい医療機関コードを連絡します。
  • スタッフへの周知:診療所のスタッフに新しい医療機関コードを周知します。

特にレセプトコンピューターの設定変更は重要です。設定が間違っていると、レセプト請求ができなくなる可能性があります。
レセコン会社には事前に移転の予定を伝え、医療機関コードが判明次第すぐに設定できるよう準備をお願いしておくとよいでしょう。

保険医療機関指定通知書の受領

保険医療機関指定通知書とは

保険医療機関指定通知書は、新しい診療所が正式に保険医療機関として指定されたことを証明する重要な書類です。
この通知書には、医療機関コード、指定年月日、診療科目などが記載されています。

通知書の到着時期

保険医療機関指定通知書は、通常、締切日の翌月1日頃にクリニック宛に発送されます。
例えば、10月申請の場合、11月1日頃の発送となります。

ただし、地域や時期によって多少前後する場合があります。
10日程度経っても届かない場合は、厚生局に問い合わせるとよいでしょう。

通知書の確認事項

保険医療機関指定通知書が届いたら、以下の点を確認してください。

  • 指定年月日:遡及指定が認められた場合、指定年月日が移転日(例:令和5年10月1日)となっているか確認します。
  • 所在地・名称:移転後の所在地と名称が正確に記載されていることを確認します。

万が一、内容に誤りがある場合は、速やかに厚生局に連絡して修正を依頼してください。

通知書の保管

保険医療機関指定通知書は、今後の手続きや確認の際に必要となる重要な書類ですので、紛失しないよう大切に保管してください。
複写を取っておくとよいでしょう。

10月診療分の請求

請求のタイミング

10月1日に移転した場合、10月診療分は新しい医療機関コードで11月上旬に請求します。
医療機関コードが10月下旬に判明するため、レセプト請求の準備期間が非常に短いことに注意が必要です。

レセプト作成時の注意点

レセプト作成時には以下の点に注意してください。

  • 医療機関コード:新しい医療機関コードを使用していることを確認します。
  • 所在地・名称:移転後の所在地と名称が正確に記載されていることを確認します。
  • 施設基準:施設基準の届出が受理されていることを確認し、適切な施設基準で請求します。
  • 継続性の確保:移転前の継続患者については、継続して診療を行っていることがわかるよう、必要に応じてコメントを記載します。

特に、施設基準については、移転の場合、原則として2km以内の移転であれば継続して算定できますが、2kmを超える場合は新規の届出が必要となり、届出受理後からの算定となる点に注意が必要です。

オンライン請求の設定

オンライン請求を行っている場合は、新しい医療機関コードでのオンライン請求の設定が必要です。
レセコン会社と相談し、適切に設定してください。

また、電子証明書の更新が必要な場合もありますので、事前に確認しておきましょう。

よくあるトラブルと対処法

保険医療機関指定申請後によくあるトラブルと対処法を紹介します。

医療機関コードが判明しない

月末になっても医療機関コードが判明しない場合は、厚生局に直接問い合わせてください。
申請に不備があり、指定が遅れている可能性もあります。

国保連合会・支払基金からの書類が届かない

厚生局での手続き完了後、1週間程度経っても国保連合会や支払基金からの書類が届かない場合は、各機関に問い合わせてください。

施設基準の届出が受理されない

施設基準の届出が受理されない場合は、厚生局に理由を確認し、必要な修正を行って再申請してください。

診療報酬の入金がない

口座情報の誤りや手続きの遅延により、診療報酬の入金がない場合は、国保連合会や支払基金に問い合わせてください。

遡及指定が認められない

遡及指定が認められず、保険医療機関指定通知書の指定年月日が移転日より後になっている場合は、厚生局に理由を確認してください。
移転距離が2kmを超えている場合など、遡及指定の条件を満たしていない可能性があります。

申請後の流れに関する重要ポイント

最後に、保険医療機関指定申請後の流れを円滑に進めるための重要ポイントをいくつか紹介します。

書類の速やかな提出

国保連合会や支払基金からの書類は、到着次第速やかに記入・提出することが重要です。
遅延すると、診療報酬の支払いにも影響する可能性があります。

レセコン会社との連携

レセプトコンピューターの設定変更は、医療機関コードが判明次第速やかに行う必要があります。
レセコン会社とは事前に連携し、スムーズに対応できるよう準備しておきましょう。

処方箋の適切な取扱い

新しい医療機関コードが判明するまでは、処方箋の医療機関コード欄を空欄にし、コメント欄に「新しい医療機関コード申請中のため未記入」と記載することをお勧めします。
コードが判明したら速やかに正しいコードを記載してください。

施設基準の確認

移転後も継続して算定したい施設基準については、厚生局での届出が適切に受理されているか確認してください。

連絡先の更新

医師会や薬剤師会、検査センター、医療機器メーカーなど、関連機関にも移転と医療機関コードの変更を連絡しておくことが重要です。

まとめ

診療所移転の厚生局手続きにおける保険医療機関指定申請後の流れについて解説しました。
申請後は、国保連合会・支払基金への書類提出、医療機関コードの確認、保険医療機関指定通知書の受領、そして移転月診療分の請求という流れで進みます。

特に重要なのは、各書類の速やかな提出と、医療機関コード判明後の適切な対応です。
これらを適切に行うことで、移転後も円滑に保険診療を継続することができます。

診療所移転は6~8ヶ月という長期にわたるプロジェクトの最終段階です。
ここまで来たら最後まで確実に手続きを完了させ、円滑な診療所移転を実現しましょう。
そして、新しい場所での診療がスムーズに始められることを願っています。

事務所情報
大岡山行政書士事務所の室内
大岡山行政書士事務所
〒145-0062 東京都大田区北千束3-20-8 スターバレーⅡ 402
【電 話】03-5499-3251(月~金 9:00~21:00)
【FAX】03-5539-4020
【メール】お問い合わせはフォームからお願いします(24時間対応)
事務所代表・記事監修
中村弥生の写真
中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

ご相談はこちらから

ページの先頭へ