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診療所移転の厚生局手続き(別紙(保険医療機関指定申請書 添付書類(様式)の作成方法)

書類の書き方レクチャー

診療所移転の厚生局手続きにおいて、保険医療機関指定申請書と一緒に提出する「別紙」は非常に重要な書類です。

この別紙の正式名称は「保険医療機関・保険薬局指定申請書 添付書類(様式)」といい、診療所の詳細情報や遡及申請に関する重要事項を記載します。

本稿では、この別紙の作成方法に焦点を当て、詳細に解説します。

別紙の位置づけと重要性

診療所移転の厚生局手続きでは、保険医療機関指定申請書(表紙)と併せて、この別紙を提出します。
表紙が基本情報を記載する書類であるのに対し、別紙は診療所の詳細情報や遡及申請に関する情報を記載する書類です。

特に移転の場合、遡及指定を受けるための重要な情報を記載する欄があり、この記載を適切に行わなければ、移転日に遡及して保険医療機関の指定を受けることができない可能性があります。

別紙の入手方法

別紙の様式は、各厚生局のホームページからダウンロードすることができます。

例えば、関東信越厚生局のホームページには、「保険医療機関等の指定等に関する申請・届出」のページに掲載されています。

別紙の記載方法

別紙の記載方法を項目ごとに詳しく解説します。
関東信越厚生局の様式を例にとりますが、各厚生局によって若干様式が異なる場合がありますので、使用する様式に合わせて適宜読み替えてください。

[1. 保険医・保険薬剤師の氏名等]

この欄には、管理者以外の診療所に勤務する保険医の情報を記載します。
保険医とは、地方厚生局に保険医登録をしている医師または歯科医師のことです。

記載項目は以下の通りです。

  • 氏名:勤務医の氏名を記載します。
  • 登録記号番号:保険医登録票の登録記号番号を「東 医 123456」のように記載します。「東」は東京の場合の例で、地域によって異なります。
  • 担当診療科:診療所開設届に記載した、その医師の担当診療科を記入します。
  • 勤務形態:「常勤」または「非常勤」のいずれかを〇で囲みます。

管理者については、表紙の「②管理者・管理薬剤師」欄に記載しますので、この欄には記載しません。

勤務医が多数いる場合は、別紙に書ききれないことがあります。
その場合は、別紙として一覧表を作成して添付することも可能です。
その場合でも、氏名、登録記号番号、担当診療科、勤務形態の情報は必ず記載してください。

[2. 1に掲げる者以外の医師、歯科医師及び薬剤師のそれぞれの数]

この欄には、保険医登録をしていない医師、歯科医師、薬剤師がいる場合に、その人数を記載します。
一般的な診療所では該当者がいないことが多いので、「0」と記載するか空欄とします。

例えば、外国人医師で日本の医師免許を持っているが保険医登録をしていない方がいる場合、その人数を記載します。

[3. 看護師、准看護師及び看護補助者のそれぞれの数]

この欄は、病院または療養病床を有する診療所のみ記載する項目です。
一般的な無床診療所の場合は記載不要ですので、空欄としておきます。

[4. 診療時間(開局時間)]

この欄には、診療所の診療時間を記載します。
保健所に提出した診療所開設届に記載した診療日時と一致させることが重要です。

記載方法の例:
平日(月~金)9:00~12:00、15:00~18:00
土曜日    9:00~12:00
日曜日・祝日 休診

訪問診療を行っている場合は、外来診療と訪問診療の両方の時間を記載します。
記載方法については、保健所に提出した診療所開設届に合わせてください。

[5. 遡及申請の有無及び区分]

この欄は、移転の場合で遡及指定を希望する場合に非常に重要な欄です。

まず、「有」を〇で囲み、次に該当する区分を〇で囲みます。
診療所移転の場合は、通常、(4)の「医療機関等が至近の距離(原則として2km以内)に移転し同日付けで新旧医療機関等を開設・廃止した場合で、患者が引き続いて診療を受けている場合」に〇をします。

この項目は非常に重要です。
移転先が移転前の診療所から半径2km以内であることが、遡及指定を受けるための条件となります。
申請時には、グーグルマップなどの2つの地点の距離を測る画面を印刷し、それを説明資料として持参するとよいでしょう。

移転先が2kmを超える場合は、遡及指定を受けることができず、最初の1ヶ月間は保険診療ができなくなる可能性があります。
この場合は、厚生局に事前に相談することをお勧めします。

[6. 指定希望日の有無]

この欄も、遡及指定を希望する場合に重要な欄です。

「有」を〇で囲み、遡及して指定を希望する日(移転日)を記載します。
例えば、10月1日に移転した場合は「令和5年10月1日」と記入します。

この欄に記載した日付が、新しい保険医療機関の指定日となります。
移転日に遡及して指定を受けることで、移転日から保険診療を行うことができます。

別紙作成時の重要ポイント

別紙を作成する際の重要なポイントをいくつか紹介します。

保健所書類との整合性

別紙に記載する情報は、保健所に提出した診療所開設届に記載した情報と一致させることが重要です。
特に、診療時間や診療科目、医師の情報などは完全に一致させてください。

もし、保健所提出後に変更があった場合は、保健所にも変更の届出を行う必要があります。

保険医登録票の確認

「1. 保険医・保険薬剤師の氏名等」欄に記載する保険医登録票の登録記号番号は、実際の保険医登録票で確認してください。
記憶や推測で記載すると誤りの原因となります。

また、保険医登録票そのものの写しも提出する必要がありますので、事前に準備しておきましょう。

遡及申請に関する資料の準備

遡及申請を行う場合は、移転前後の診療所の距離が2km以内であることを示す資料を準備しておくとよいでしょう。

グーグルマップなどで2点間の距離を測定した画面をプリントアウトしておくと、申請時にスムーズに説明できます。
また、移転前後の住所を正確に記載した資料も用意しておくとよいでしょう。

記載ミスへの対応

記載ミスがあった場合は、修正液などで修正せず、新しい用紙に書き直すのが原則です。
ただし、軽微な修正であれば、二重線で消して訂正印を押すという方法も可能な場合があります。
厚生局によって対応が異なる場合がありますので、事前に確認するとよいでしょう。

別紙提出時の注意点

別紙を提出する際の注意点をいくつか紹介します。

押印の要否

別紙には通常、押印は不要です。
ただし、厚生局によっては押印が必要な場合もありますので、事前に確認してください。

原本と写しの準備

厚生局への提出用と法人控え用の2部を準備します。原本は厚生局提出用とし、法人控え用はコピーで構いませんが、法人控え用に収受印をもらうようにしてください。

他の書類との関連

別紙は、保険医療機関指定申請書(表紙)と一緒に提出します。
また、保健所の副本等の写し一式や保険医療機関廃止届なども一緒に提出しますので、書類一式をまとめて準備しておきましょう。

別紙提出後の流れ

別紙を含む保険医療機関指定申請書一式を提出した後の流れは以下の通りです。

国保連合会と支払基金からの書類への対応

厚生局での保険医療機関指定申請後、国保連合会と支払基金からそれぞれの手続き書類が届きます。
これらの書類も速やかに提出することが重要です。
期限が数日後に迫っている場合もありますので、迅速に対応しましょう。

医療機関コードの通知

厚生局の締切日(例えば毎月10日)に間に合うように申請した場合、その月の下旬には新しい医療機関コードが判明します。

例えば、10月10日締切の場合、10月下旬には新しい医療機関コードが判明します。
厚生局から電話で連絡がある場合や、ホームページで公表される場合があります。

保険医療機関指定通知書の受領

通常、締切日の翌月1日頃に保険医療機関指定通知書がクリニック宛に発送されます。
例えば、10月申請の場合、11月1日頃の発送となります。

遡及指定の確認

遡及指定が認められた場合、保険医療機関指定通知書の指定年月日が移転日(例:令和5年10月1日)となっていることを確認してください。

万が一、遡及指定が認められなかった場合は、厚生局に問い合わせて理由を確認し、必要に応じて再申請を検討してください。

よくある質問と回答

最後に、別紙に関するよくある質問と回答をいくつか紹介します。

Q: 保険医登録をしていない医師がいる場合、どのように記載すればよいですか?
A: 保険医登録をしていない医師がいる場合は、「2. 1に掲げる者以外の医師、歯科医師及び薬剤師のそれぞれの数」欄にその人数を記載します。ただし、保険診療を行うためには原則として保険医登録が必要ですので、早めに保険医登録の手続きを行うことをお勧めします。
Q: 移転先が2kmを超えてしまう場合はどうすればよいですか?
A: 移転先が2kmを超える場合は、原則として遡及指定を受けることができません。この場合、移転後の1ヶ月間は保険診療ができず、自費診療となります。
Q: 診療時間を変更する場合はどうすればよいですか?
A: 診療時間を変更する場合は、保健所にも診療時間変更の届出が必要です。まず保健所に届出を行い、その後厚生局にも変更届を提出します。別紙に記載する診療時間は、保健所に届け出た最新の診療時間と一致させてください。

まとめ

診療所移転の厚生局手続きにおける別紙(保険医療機関指定申請書 添付書類(様式))の作成方法について解説しました。
別紙は、診療所の詳細情報や遡及申請に関する重要事項を記載する書類であり、適切に作成することが遡及指定を受けるために不可欠です。

特に重要なのは、遡及申請に関する項目(「5. 遡及申請の有無及び区分」と「6. 指定希望日の有無」)を適切に記載することです。
また、別紙に記載する情報は、保健所に提出した診療所開設届に記載した情報と一致させることも重要です。

別紙を含む保険医療機関指定申請書一式を適切に作成し、厚生局の締切日に間に合うように提出することで、移転日に遡及して保険医療機関の指定を受け、円滑に診療を継続することができます。

診療所移転は6~8ヶ月という長期にわたるプロジェクトの最終段階です。ここまで来たら最後まで確実に手続きを完了させ、円滑な診療所移転を実現しましょう。

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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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