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高額医療機器を無駄にしない:事業譲渡による設備継続活用のメリット

高額医療機器

クリニック経営者必見!廃業より医療法人等への事業譲渡を選ぶべき8つの理由

理由6. 医療資源の有効活用

クリニック運営において、医療機器や設備への投資は大きな負担となる一方、診療の質を左右する重要な要素です。
廃業により、これら貴重な資産が廃棄されることは、経済的損失だけでなく、医療資源の大きな無駄でもあります。
事業譲渡により、設備を継続活用することで得られるメリットについて詳しく解説します。

医療機器投資の現実

高額な初期投資

現代のクリニック運営には、以下のような高額な医療機器が必要です。

  • MRI装置:3,000万円~1億円
  • CT装置:1,000万円~3,000万円
  • X線装置:300万円~800万円
  • 超音波診断装置:200万円~500万円
  • 内視鏡システム:500万円~1,000万円
  • 血液分析装置:300万円~600万円
  • 心電図装置:50万円~200万円

小規模なクリニックでも、総額で数千万円から1億円規模の機器投資が必要になります。

減価償却の現実

医療機器の法定耐用年数は4~6年程度に設定されていますが、実際には10年以上使用可能な機器も多く、減価償却が完了した後も十分な機能を保持しています。

例えば、5年前に3,000万円で購入したMRI装置の場合

  • 帳簿価額:ほぼゼロ(定額法による減価償却)
  • 実際の価値:1,500万円~2,000万円程度
  • 処分費用:200万円~500万円

この差額は、廃業により失われる大きな経済的損失となります。

この差額は、廃業により失われる大きな経済的損失となります。

処分費用の負担

医療機器の廃棄には多額の費用がかかります。

  • 放射線関連機器:特別な廃棄処理が必要
  • 大型機器:解体・搬出費用
  • 産業廃棄物処理:適正処理のための委託費用

環境負荷の問題

医療機器には希少金属やプラスチック材料が多用されており、適切にリサイクルされなければ環境負荷となります。

廃棄処分は、地球環境の観点からも望ましくない選択です。

医療資源の損失

日本の医療現場では、高額医療機器の不足が慢性的な問題となっています。
特に地方や中小規模の医療機関では、予算の制約により最新機器の導入が困難な状況です。

稼働可能な医療機器を廃棄することは、社会全体の医療資源の無駄遣いにつながります。

事業譲渡による設備継続活用のメリット

経済的価値の維持

事業譲渡により医療機器が継続使用されることで、その経済的価値が譲渡価格に反映されます。

前述のMRI装置の例では、廃棄費用500万円の支出を避けるだけでなく、1,500万円程度の資産価値として評価される可能性があります。

差額効果:1,500万円(資産価値)+ 500万円(処分費用回避)= 2,000万円

新規開業コストの削減

承継先の医師にとって、既存の医療機器を引き継げることは大幅なコスト削減になります。
新規でMRI装置を導入する場合と比較すると・・・

新規導入の場合

  • 機器購入費:3,000万円
  • 設置工事費:300万円
  • 稼働開始までの期間:6ヶ月

事業承継の場合

  • 追加投資:メンテナンス費用のみ
  • 即座に稼働可能
  • 初期投資リスクの大幅軽減

診療の継続性確保

検査体制の維持

患者さんにとって、慣れ親しんだクリニックで同じ検査を継続して受けられることは大きな安心感につながります。

特に経過観察が必要な疾患の場合、同一機器での継続的な検査により、より正確な診断が可能になります。

医療の質向上

高額医療機器を継続使用することで、地域の医療レベル維持・向上に貢献できます。

例えば・・・

  • 早期がん発見のための内視鏡検査
  • 循環器疾患診断のための心エコー検査
  • 整形外科疾患の画像診断

技術的メリット

機器習熟度の継承

医療機器の操作には高度な技術と経験が必要です。

長年使用してきた機器の操作ノウハウを、スタッフと共に承継先に引き継ぐことで、

  • 機器の最適な設定方法
  • メンテナンスのポイント
  • トラブル時の対処法
  • 患者さんへの適切な説明方法

これらの知見を承継することで、機器の性能を最大限に活用できます。

メンテナンス体制の継続

既存の保守契約やメンテナンス業者との関係も引き継がれることで・・・

  • 迅速な故障対応
  • 定期メンテナンスの継続
  • 部品調達ルートの確保
  • コスト効率的な保守体制

設備投資の回収最適化

投資回収期間の考慮

医療機器への投資回収には通常5~10年程度を要します。
事業譲渡により、投資回収期間を完全に活用できます。

例:超音波診断装置(購入価格400万円、3年使用)

  • 廃業の場合:投資回収不完全、処分費用50万円
  • 事業譲渡の場合:残り期間での回収を譲渡価格に反映

リース・ローンの承継

医療機器のリース契約やローンも適切に承継することで・・・

  • 中途解約違約金の回避
  • 有利な金利条件の維持
  • 手続きコストの削減

地域医療への貢献

医療アクセスの向上

高額医療機器を継続使用することで、地域住民の医療アクセス向上に貢献できます。

  • 遠方の病院へ行かずに済む検査の提供
  • 早期診断による重篤化の防止
  • 医療費削減効果

医療格差の是正

都市部と地方の医療格差解消にも貢献します。

地方の小規模クリニックでも、事業承継により高度な医療機器を維持できることで、地域医療の質的向上が図れます。

環境・社会的責任

持続可能な医療の実現

医療機器の継続使用は、持続可能な医療システムの構築に貢献します。

  • 廃棄物削減による環境負荷軽減
  • 資源の有効活用
  • 循環型社会への貢献

社会的資源の有効活用

医療機器は社会的資源でもあります。

個人の資産を超えた社会的価値を考慮し、その有効活用を図ることは医師としての社会的責任でもあります。

承継時の注意点

機器の状態確認

事業譲渡前には、以下の確認が重要です。

  • 機器の動作状況
  • メンテナンス履歴
  • 残存耐用年数
  • 必要な修繕・交換部品

保守契約の移行

  • 既存保守契約の承継手続き
  • 保証期間の確認
  • メンテナンス業者との関係継続

法的要件の確認

  • 医療機器の設置基準適合
  • 放射線機器の許可承継
  • 安全管理責任者の変更手続き

技術革新への対応

アップグレード機会

事業承継を機に、既存機器のソフトウェアアップグレードや機能追加を行うことで、さらなる性能向上を図ることも可能です。

段階的な機器更新

承継後は、急激な設備投資負担なく、段階的に機器の更新・追加を進められます。

まとめ

クリニックの事業譲渡による医療機器・設備の継続活用は、経済的メリットだけでなく、医療の質向上、地域医療への貢献、環境負荷軽減など、多面的な価値を創造します。

高額な投資により導入した医療機器を廃棄することなく、次世代の医師に引き継ぐことで、その価値を最大限に活用できます。
これは、医療資源の有効活用という観点からも、最も理にかなった選択と言えるでしょう。

事業譲渡を検討される際は、医療機器・設備の価値を適正に評価し、その継続活用による社会的意義も考慮して進められることをお勧めします。

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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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