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大切なスタッフを守る:事業譲渡による雇用継続の重要性と効果

従業員と医師

クリニック経営者必見!廃業より医療法人等への事業譲渡を選ぶべき8つの理由

理由4. 従業員の雇用を守る

クリニック運営において、看護師や事務スタッフは院長先生と共に患者さんの健康を支える重要なパートナーです。
長年一緒に働いてきたスタッフの雇用を守ることは、経営者としての重要な責務でもあります。
今回は、事業譲渡による雇用保護のメリットと、それがもたらす様々な効果について詳しく解説します。

承継における実務的配慮

生活の安定を守る

看護師や事務スタッフにとって、職場は単なる働く場所ではなく、生活を支える重要な基盤です。
特に、家族を扶養している職員や住宅ローンを抱えている職員にとって、急な失業は生活に深刻な影響を与えます。

事業譲渡により雇用が継続されることで、スタッフは安心して現在の生活を維持できます。

子どもの教育費、親の介護費用、住宅ローンの返済など、継続的な収入が必要な生活設計を維持できることは、スタッフとその家族にとって計り知れない価値があります。

キャリアの継続性

医療従事者にとって、経験の蓄積は専門性向上の重要な要素です。
廃業により転職を余儀なくされると、新しい職場での適応期間が必要になり、キャリア形成に影響が生じる可能性があります。

事業譲渡による雇用継続では、これまで培ってきた専門性や経験を活かし続けることができ、さらなるスキルアップの機会も確保されます。

特に、専門的な医療技術や検査技術を身につけたスタッフにとって、その技能を継続的に活用できることは大きなメリットです。

医療チームの専門性維持

蓄積された経験と知識

長年同じクリニックで働いてきたスタッフは、そのクリニック特有の診療スタイルや患者さんの特性を熟知しています。

どの患者さんがどのような配慮を必要とするか、どの検査でどのような点に注意すべきかなど、マニュアルには記載されない実践的な知識を豊富に持っています。

例えば、糖尿病専門クリニックの看護師であれば、血糖値測定の技術だけでなく、患者さん一人ひとりの生活パターンや食事の好み、運動習慣なども把握しており、より効果的な指導が可能です。
この種の経験は短期間では身につかない貴重な資産です。

患者さんとの信頼関係

患者さんにとって、馴染みのあるスタッフがいることは大きな安心感につながります。
特に高齢の患者さんや慢性疾患を抱える患者さんにとって、信頼できるスタッフとの継続的な関係は治療効果にも影響します。

「いつものスタッフさんがいるから安心」という患者さんの声は、医療の質を測る重要な指標でもあります。

事業譲渡により、この貴重な人間関係を維持できることは、患者満足度の向上にも直結します。

新しい経営者にとってのメリット

即戦力の確保

新しく事業を承継する医師にとって、経験豊富なスタッフの存在は非常に心強いものです。

クリニックの運営方法、患者さんの特性、地域の医療ニーズなど、実務に関する知識を持ったスタッフがいることで、スムーズな事業承継が可能になります。

研修期間の短縮

新規採用の場合、基本的な医療知識から始まり、そのクリニック特有の業務まで、幅広い研修が必要になります。

経験豊富なスタッフがいることで、新しい医師への業務引き継ぎも効率的に行えます。

コスト削減効果

新規スタッフの採用には、求人広告費、面接コスト、研修費用など様々な費用がかかります。

既存スタッフの雇用継続により、これらの採用コストを大幅に削減できます。

スタッフのモチベーション向上

組織への帰属意識

雇用が継続されることで、スタッフのクリニックに対する帰属意識や愛着がさらに深まります。

「大切にされている」という実感は、仕事に対するモチベーション向上につながり、より質の高い医療サービスの提供が期待できます。

スキルアップの機会

新しい医師の下で働くことで、これまでとは異なる医療技術や診療方法を学ぶ機会が得られます。

これは、スタッフにとって新たな成長の機会となり、専門性のさらなる向上が期待できます。

地域コミュニティへの貢献

雇用の安定化

地域の雇用を維持することは、地域経済の安定化にも貢献します。

特に、医療従事者は地域にとって重要な人材であり、その雇用を維持することで地域全体の医療レベル向上にもつながります。

地域密着型サービスの継続

地域住民の特性や健康問題を理解しているスタッフが継続して働くことで、より地域に密着した医療サービスを提供できます。

これは、画一的なサービスでは実現できない、きめ細やかな医療の実現を可能にします。

労務管理上のメリット

労働基準法の遵守

事業譲渡では、労働契約の包括的承継により、法的な問題を回避できます。

廃業による解雇の場合、30日前の予告や解雇予告手当の支払いなど、労働基準法に基づく手続きが必要になりますが、事業譲渡ではこれらの複雑な手続きを回避できます。

労働紛争の回避

突然の廃業による解雇は、場合によっては労働紛争に発展する可能性があります。

事業譲渡による雇用継続は、そのようなトラブルを未然に防ぐ効果があります。

承継における実務的配慮

雇用条件の調整

事業譲渡では、スタッフの雇用条件について新しい経営者と調整することが可能です。

給与水準の維持、福利厚生の継続、勤務時間の調整など、スタッフの働きやすさを考慮した条件設定ができます。

段階的な移行

急激な変化によるスタッフの不安を軽減するため、段階的な移行プロセスを設けることも可能です。

前院長による引き継ぎ期間を設けることで、スタッフが新しい環境に適応しやすくなります。

まとめ

クリニックの事業譲渡による雇用保護は、単に職場を維持するだけでなく、スタッフの生活安定、専門性の活用、患者サービスの質向上など、多面的な価値を創造します。

長年一緒に働いてきた仲間を大切にすることは、経営者としての責任であり、同時に医療の質向上にもつながる重要な選択です。

事業譲渡を検討される際は、スタッフの雇用継続を重要な判断要素として考慮し、皆が安心して働き続けられる環境づくりを目指していただきたいと思います。

それが、真に価値ある事業承継の実現につながるのです。

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事務所代表・記事監修
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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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