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医療法人の出口戦略 理由19:職員説明会による組織一体となった承継準備

医療法人の事業承継を成功に導く「職員説明会」完全ガイド

医療法人は労働集約型の事業であり、医師、看護師、薬剤師、検査技師、事務職員など、多様な専門職で構成される組織です。事業承継の成功は、これらの職員の理解と協力なくして実現することはできません。承継に対する職員の不安や反発は、患者サービスの質低下、離職率の増加、組織の士気低下などを招き、承継後の事業運営に深刻な影響を与えます。

早期から職員説明会を継続的に開催し、承継の必要性と計画について丁寧に説明することで、職員の理解と協力を獲得し、組織一体となった承継準備を実現できます。

職員の承継に対する懸念と不安

雇用継続への不安

事業承継において職員が最も懸念するのは、自らの雇用が継続されるかという点です。新しい理事長の経営方針により人員削減が実施される、労働条件が悪化する、職場環境が変化するなどの不安を抱く職員が多くいます。

これらの不安は、職員の仕事への集中力低下、離職の検討、患者への悪影響などをもたらし、承継前から医療法人の運営に支障を来す可能性があります。早期の説明により、雇用継続への明確なコミットメントを示すことが重要です。

労働条件の変化への懸念

給与水準、賞与、福利厚生、勤務時間、休暇制度など、労働条件の変化を懸念する職員も多くいます。承継により条件が悪化するのではないか、新理事長の方針により働きにくくなるのではないかという懸念が、職員の不安を増大させます。

労働条件については、現状維持または改善の方向性を明確に示し、職員の安心を確保することが重要です。

職場環境・組織文化の変化への不安

長年慣れ親しんだ職場環境や組織文化が大きく変化することへの不安も、職員の重要な懸念事項です。人間関係、コミュニケーション方法、業務の進め方、職場の雰囲気などの変化により、働きにくくなることを心配する職員が多くいます。

職員説明会の段階的実施

第1段階:承継の必要性説明

最初の説明会では、事業承継の必要性と重要性について基本的な説明を実施します。現理事長の年齢・健康状態、医療法人を取り巻く環境変化、承継準備の必要性などについて、職員が理解しやすい言葉で丁寧に説明します。

この段階では、承継の具体的な内容には触れず、なぜ承継準備が必要なのか、承継しなかった場合にどのような問題が生じるのかという基本的な理解の促進に専念します。

第2段階:承継計画の概要説明

承継の必要性について理解が得られた段階で、具体的な承継計画の概要を説明します。想定している承継時期、後継者候補の概要、承継方法の検討状況などについて説明し、職員の質問に答えます。

職員への影響については、雇用継続の方針、労働条件の維持・改善、職場環境の継続性などについて明確にコミットし、職員の不安解消を図ります。

第3段階:後継者の紹介と交流

後継者候補が決定した段階で、職員への正式な紹介を実施します。後継者自身による挨拶、経歴・専門性の説明、将来構想の発表、職員との質疑応答などにより、後継者と職員の相互理解を促進します。

継続的な交流機会を設けることで、職員が後継者の人格と能力を直接評価し、信頼関係を構築できる環境を提供します。

第4段階:承継実行計画の詳細説明

承継実行が近づいた段階で、具体的な実行計画を詳細に説明します。承継の具体的時期、手続きの流れ、職員への影響、実行期間中の業務体制などについて詳細に説明し、職員の準備を促します。

職種別の配慮事項

医療従事者への説明

医師、看護師、薬剤師、検査技師などの医療従事者に対しては、医療の質維持、専門性の継続、研修機会の確保、キャリア開発支援などについて重点的に説明します。

医療従事者は医療の質と患者安全に強い関心を持っているため、承継により医療レベルが低下しないこと、むしろ向上する可能性があることを具体的に説明し、理解を得ます。

事務職員への説明

事務職員に対しては、業務内容の継続性、システムの変更予定、事務処理方法の改善、効率化の取り組みなどについて説明します。事務職員は業務の安定性と効率性に関心が高いため、これらの点について具体的な方針を示します。

管理職への説明

看護部長、事務長、各部門責任者などの管理職に対しては、承継後の組織体制、権限と責任の変化、管理方針の継続性などについて詳細に説明します。管理職の理解と協力は、一般職員への波及効果も大きく、重点的な対応が必要です。

効果的な説明手法

分かりやすい資料作成

職員説明会では、専門用語を避け、図表やイラストを活用した分かりやすい資料を作成します。承継の流れ、組織体制の変化、職員への影響などを視覚的に示すことで、職員の理解を促進します。

資料は職種や階層に応じてカスタマイズし、それぞれの関心と理解レベルに適した内容とします。

双方向コミュニケーションの重視

一方的な説明ではなく、職員からの質問、意見、提案を積極的に聴取し、双方向のコミュニケーションを実現します。職員の懸念に真摯に対応し、可能な範囲で要望を承継計画に反映させます。

継続的なフォローアップ

説明会での説明だけでなく、その後の継続的なフォローアップにより職員の理解を深めます。個別相談の実施、追加説明会の開催、進捗状況の定期報告などにより、職員の不安解消と理解促進を継続的に図ります。

職員参画の促進

承継準備への職員参画

承継準備の一部について、職員の参画を求めることで、当事者意識の醸成と協力意識の向上を図ります。承継後の業務改善提案、新体制での役割分担検討、患者サービス向上策の検討などに職員の知恵と経験を活用します。

職員代表の承継委員会参加

承継検討委員会に職員代表を参加させ、職員の視点を承継計画に反映させます。職員代表による意見表明、提案、質問などにより、より実効性の高い承継計画を策定できます。

技術・知識の継承支援

長年の経験により蓄積された職員の技術・知識を後継者に確実に継承するため、職員による継承支援を促進します。業務マニュアルの作成、指導計画の策定、実技指導の実施などにより、組織の知的資産を確実に継承します。

説明会による具体的効果

不安解消と安心感の提供

継続的な説明により職員の不安を解消し、承継に対する安心感を提供できます。雇用継続、処遇維持、職場環境の安定などについて明確な方針を示すことで、職員の心理的安定を確保します。

協力意識の向上

職員の理解が深まることで、承継準備への積極的な協力意識が向上します。職員が承継の意義を理解し、成功への貢献意欲を持つことで、組織一体となった承継準備を実現できます。

組織の結束力強化

承継という共通の目標に向かって組織が一体となることで、職員間の結束力が強化されます。困難な課題に対して協力して取り組む経験により、組織全体のチームワークと連帯感が向上し、承継後の強固な組織基盤を構築できます。

説明会運営の実務的配慮

適切な開催頻度と時期

職員説明会は、職員の業務に支障を来さない時期と頻度で開催します。勤務シフトの調整、複数回の同内容開催、録画による後日視聴機会の提供などにより、全職員が参加できる環境を整備します。

説明内容の重要度と緊急度に応じて開催頻度を調整し、過度な説明による職員の負担増加を避けながら、必要十分な情報提供を実施します。

職場環境への配慮

説明会の開催が日常業務や患者サービスに影響しないよう、適切な配慮を行います。患者の診療時間外での開催、代替要員の確保、緊急時対応体制の維持などにより、医療サービスの継続性を確保します。

情報セキュリティの確保

承継に関する機密性の高い情報を扱うため、適切な情報セキュリティ対策を実施します。参加者の限定、資料の管理、録音・録画の禁止、秘密保持の徹底などにより、情報漏洩を防止します。

職員からのフィードバック活用

懸念事項の体系的収集

職員からの懸念事項を体系的に収集し、カテゴリー別に整理して対応策を検討します。雇用関連、労働条件関連、業務関連、職場環境関連など、懸念の種類に応じた適切な対応を実施します。

改善提案の承継計画への反映

職員からの建設的な改善提案については、承継計画への反映を積極的に検討します。業務効率化、患者サービス向上、職場環境改善などの提案を承継計画に組み込み、承継を機とした組織の発展を図ります。

継続的な対話の実施

説明会だけでなく、日常的な対話機会を通じて職員との継続的なコミュニケーションを図ります。管理職による定期的な面談、提案箱の設置、匿名アンケートの実施などにより、職員の声を継続的に収集します。

承継準備への職員参画

業務継承マニュアルの作成

各部門・職種の業務について、詳細な継承マニュアルの作成を職員に依頼します。長年の経験により蓄積されたノウハウ、注意点、改善提案などを文書化し、後継者および新体制での確実な業務継承を支援します。

患者情報の整理・引継ぎ

患者との関係性、治療歴、個別配慮事項などの情報について、職員による整理・引継ぎを実施します。患者サービスの質を維持し、承継による悪影響を最小化するため、詳細で正確な情報の引継ぎが重要です。

改善提案の収集・実施

承継を機とした業務改善について、職員からの提案を積極的に収集し、実現可能なものから実施します。職員の参画により、承継が単なる体制変更ではなく、組織の発展機会であることを実感してもらいます。

特殊な職員への個別対応

長期勤続職員への配慮

創設期から勤務している長期勤続職員については、医療法人への愛着と現理事長への信頼が強く、承継に対して複雑な感情を抱く場合があります。これらの職員に対しては、個別の配慮と説明により、理解と協力を得ることが重要です。

長期勤続職員の経験と知識は医療法人の貴重な資産であり、承継後も継続的に活用できるよう、適切な処遇と役割を用意します。

専門性の高い職員への対応

高度な専門性を持つ職員については、その専門性を承継後も十分に活用できることを明確に示します。研修機会の継続、最新設備の導入、専門性向上支援などにより、専門職としてのキャリア発展を支援します。

管理職への重点対応

管理職は一般職員への影響力が大きいため、特に重点的な説明と協議を実施します。承継後の組織体制での役割、権限と責任、処遇条件などについて詳細に協議し、管理職の理解と協力を確実に獲得します。

説明内容の工夫

職員目線での影響説明

承継が職員にとってどのような意味を持つのか、職員の視点から説明します。雇用の安定、処遇の改善、働きがいの向上、職場環境の改善などの観点から、承継のメリットを具体的に示します。

成功事例の紹介

他の医療法人での承継成功事例を紹介し、承継により職員にとって良い結果がもたらされた実例を示します。職員の処遇改善、職場環境の向上、事業の発展などの成功事例により、承継への期待感を醸成します。

質疑応答の充実

職員からの質問に対して、誠実で詳細な回答を提供します。即答困難な質問については、後日の回答を約束し、確実に回答を提供することで、職員の信頼を獲得します。

組織一体化の促進策

部門横断的な取り組み

承継準備を部門横断的なプロジェクトとして位置づけ、各部門が協力して取り組む体制を構築します。部門間の連携強化、情報共有の促進、共通目標の設定などにより、組織の一体感を醸成します。

職員の役割と貢献の明確化

各職員が承継成功のために果たすべき役割と期待される貢献を明確に示します。職員一人ひとりが承継の当事者であることを認識し、積極的な参画を促進します。

成果の共有と称賛

承継準備における職員の貢献と成果を定期的に共有し、適切な称賛と評価を実施します。職員のモチベーション向上と継続的な協力意欲の維持を図ります。

説明会の効果測定

職員満足度調査

定期的な職員満足度調査により、説明会の効果と職員の理解度を測定します。承継に対する理解度、不安の程度、協力意欲などを定量的に測定し、説明内容や方法の改善を図ります。

離職率の監視

承継準備期間中の離職率を継続的に監視し、承継による悪影響の早期発見と対策実施を図ります。離職率の上昇が確認された場合は、原因分析と改善策の実施により、職員の定着促進を図ります。

業務品質の維持確認

承継準備が業務品質に悪影響を与えていないかを継続的に確認します。患者満足度、医療安全指標、業務効率指標などにより、業務品質の維持を確認し、必要に応じて対策を実施します。

説明会による長期的効果

組織文化の継承と発展

職員説明会を通じて、医療法人の理念・価値観・組織文化を確実に継承し、さらなる発展を図ることができます。職員が組織の歴史と使命を深く理解することで、承継後も一貫した組織文化を維持できます。

変化への適応力向上

継続的な説明会により、職員の変化への適応力を向上させることができます。承継という大きな変化を職員が前向きに受け入れ、新しい体制での積極的な貢献を実現できます。

継続的改善文化の醸成

職員説明会での双方向コミュニケーションにより、継続的改善の文化を醸成できます。職員が積極的に改善提案を行い、組織の発展に貢献する文化を確立し、承継後の持続的成長を支援します。

まとめ

職員説明会による組織一体となった承継準備は、医療法人の事業承継成功において不可欠な要素です。職員の理解と協力を得ることで、承継リスクの軽減、組織の安定性確保、承継後の発展促進を実現できます。

早期から継続的な職員説明会を実施することで、職員が安心して承継を受け入れ、積極的に協力する組織を構築できます。医療法人の人的資源を最大限活用した理想的な承継のため、今すぐにでも職員説明会の計画策定を開始することをお勧めします。

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事務所代表・記事監修
中村弥生の写真
中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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