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医療法人の戦略的優位性:買収による開業準備期間の劇的短縮効果

買収による開業準備期間の劇的短縮効果

既存クリニック買収の10大メリット③

医療法人が新規事業展開を検討する際、時間こそが最も貴重な資源です。

既存クリニックの事業譲渡による買収は、新規開設に必要な膨大な準備期間を大幅に短縮し、競合他院に先んじて市場参入を果たすことを可能にします。

この時間短縮効果は、単なる効率化を超えた戦略的価値を持っています。

新規開設に必要な準備期間の実態

標準的な開業準備スケジュール

新規クリニックの開設には、通常12ヶ月から18ヶ月の準備期間が必要とされています。
この期間には、以下のような多岐にわたる作業が含まれます。

立地選定と契約(2-4ヶ月)

適切な立地の選定は、クリニック成功の鍵を握る重要な要素です。
人口動態の調査、競合医院の分析、交通アクセスの評価、賃料交渉など、慎重な検討が必要です。理想的な物件が見つからない場合、この期間はさらに延長される可能性があります。

設計・建築工事(4-6ヶ月)

医療施設特有の設計要件を満たす設計図面の作成、建築確認申請、内装工事、医療ガス配管、電気設備工事など、専門的な工事が必要です。
工事期間中は一切の収益が発生しないため、この期間の短縮は経営上極めて重要です。

医療機器の選定と導入(2-3ヶ月)

X線装置、超音波診断装置、電子カルテシステムなど、必要な医療機器の選定、発注、納入、設置には相当な時間が必要です。
特に高額な画像診断機器は、発注から納入まで数ヶ月を要することがあります。

各種申請手続き(2-3ヶ月)

診療所開設届、保険医療機関指定申請、各種施設基準の届出など、行政手続きには多大な時間と労力が必要です。
書類の不備による再提出や審査期間により、予定よりも長期化することがあります。

スタッフ採用と研修(2-3ヶ月)

医師、看護師、医療事務スタッフの採用、研修、チームビルディングには十分な時間を確保する必要があります。
特に経験豊富なスタッフの確保は困難を極めることがあります。

買収による時間短縮効果

即座の事業開始可能性

既存クリニックの買収では、これらの準備期間を大幅に短縮できます。

立地確保の即時性

すでに医療機関として運営されている立地は、医療法上の要件を満たし、患者のアクセスも実証済みです。立地選定にかかる時間とリスクを完全に回避できます。

設備・機器の即時利用

既存の医療機器や設備をそのまま活用できるため、新規購入や設置工事の時間を省略できます。買収契約締結後、最短で数週間での事業開始が可能です。

許認可の継承

診療所開設届や保険医療機関指定など、既存の許認可を引き継ぐことで、新規申請にかかる時間を大幅に短縮できます。

迅速な市場参入による戦略的優位

競合優位性の確保

市場参入のスピードにより、競合他院に先んじて患者基盤を確保できます。
医療業界では、一度確立された患者と医師の関係は非常に強固であり、後発参入者が市場シェアを奪うことは困難です。

資金効率の最大化

投資資金が早期に収益を生み始めるため、投資効率が格段に向上します。
新規開設では投資回収期間が5-7年となることが多い中、買収では2-3年での回収も可能になります。

買収後の早期安定化

統合作業の効率化

買収後の統合作業を効率化することで、さらなる時間短縮効果を実現できます。

システム統合の迅速化

電子カルテシステムや会計システムなど、既存システムとの統合を迅速に行います。
事前の準備により、システム停止時間を最小限に抑え、診療への影響を回避できます。

スタッフ統合の円滑化

既存スタッフと新しい経営陣との統合を円滑に進めることで、早期の安定運営を実現します。
適切なコミュニケーションと明確な役割分担により、統合期間を短縮できます。

時間価値の定量化

機会利益の計算

時間短縮効果を定量的に評価することで、買収の価値をより明確に把握できます。

早期収益化による利益

新規開設と比較して1年早く事業を開始できた場合、その1年分の営業利益が買収による直接的な利益となります。
月間営業利益が500万円のクリニックであれば、年間6,000万円の利益を1年早く獲得できることになります。

投資効率の向上

投資回収期間の短縮により、投資効率(IRR)が大幅に向上します。
これにより、次の投資機会への資金捻出も早期に可能になり、持続的な成長サイクルを構築できます。

まとめ

既存クリニックの買収による開業準備期間の短縮は、単なる時間節約を超えた戦略的価値を持ちます。

市場参入スピードの向上、競合優位性の確保、投資効率の最大化など、多面的なメリットを提供します。

医療法人の多店舗展開戦略において、この時間短縮効果を適切に活用することで、持続的な成長と競争優位性の確保を実現できるでしょう。

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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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