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医療法人買収の核心:確立された患者基盤継承がもたらす事業安定性

確立された患者基盤継承がもたらす事業安定性

既存クリニック買収の10大メリット②

医療法人が事業譲渡により既存クリニックを買収する最大の魅力の一つが、長年にわたって築かれた患者基盤をそのまま引き継げることです。

新規開設では患者獲得に数年を要する場合も多い中、買収により即座に安定した患者数と収益を確保できる価値は計り知れません。

患者基盤の真の価値とは

単なる患者数を超えた資産価値

患者基盤は単に診察を受ける人数の集合体ではありません。
それは長年にわたって築かれた信頼関係、継続的な医療提供の実績、そして予測可能な収益源としての価値を持つ重要な経営資産です。

継続受診患者の経済価値

慢性疾患を抱える患者や定期検診を受ける患者は、長期にわたって安定した収益をもたらします。
例えば、糖尿病や高血圧などの生活習慣病患者は月1回の受診を継続するため、年間を通じて予測可能な収益を生み出します。
このような患者基盤があることで、事業計画の精度が飛躍的に向上します。

口コミによる新患獲得力

満足度の高い既存患者は、家族や友人への紹介という形で新しい患者を連れてきます。
この自然な患者獲得チャネルは、広告宣伝費をかけずに継続的に新患を獲得できる貴重な仕組みです。

新規開設との患者獲得期間比較

新規開設時の患者獲得の困難さ

新規開設したクリニックが安定した患者数を確保するまでには、通常1年から3年程度の期間が必要とされています。
この期間中は、以下のような課題に直面します。

認知度ゼロからのスタート

地域住民にとって全く未知の医療機関として始まるため、その存在を認知してもらうこと自体が大きな課題となります。
看板設置、チラシ配布、ウェブサイト開設など、様々な広告宣伝活動が必要ですが、効果が現れるまでには時間がかかります。

信頼構築に要する時間

医療は信頼関係が重要な業界です。
新しい医師や看護師に対して患者が信頼を寄せるまでには、実際の診療経験を通じた時間の積み重ねが必要です。
特に高齢者層では、新しい医療機関への移行に慎重になる傾向があります。

買収による即戦力効果

既存クリニックの買収では、これらの課題をすべて解決した状態からスタートできます。

初月からの安定した患者数

買収直後から、前医師が診ていた患者の大部分が継続して受診するため、開院初月から計画的な診療スケジュールを組むことができます。
これにより、収益予測の精度が格段に向上し、事業計画の確実性が高まります。

季節変動パターンの把握

既存の診療データにより、インフルエンザシーズンの患者増加、夏季の皮膚疾患、春の花粉症患者など、季節ごとの患者動向を事前に把握できます。

この情報により、スタッフ配置や医薬品在庫の最適化が可能になります。

患者継承率を高める戦略

買収時の患者への適切な説明

患者基盤の継承を成功させるには、買収時の患者への説明が極めて重要です。

院長交代の丁寧な説明

前院長から新院長への引継ぎ期間を設け、患者に対して十分な説明と紹介を行います。
新院長の経歴、専門分野、診療方針などを明確に伝えることで、患者の不安を軽減できます。

診療レベル維持の保証

これまでと同等またはそれ以上の医療サービスを提供することを明確に約束し、患者の期待に応える姿勢を示します。

特に慢性疾患の管理や定期検診など、継続性が重要な医療については、一貫したケアを提供することを強調します。

診療記録の完全な引継ぎ

電子カルテデータの継承

患者の過去の診療履歴、検査結果、処方歴などを完全に引き継ぐことで、継続的で一貫した医療を提供できます。
この情報の継承により、患者は新たに病歴を説明する必要がなく、スムーズな診療継続が可能になります。

かかりつけ医機能の維持

地域のかかりつけ医として果たしてきた役割を継続し、患者の健康管理を長期的な視点で支援する姿勢を示します。

患者満足度向上による基盤強化

サービス品質の向上

買収を機に、医療サービスの質をさらに向上させることで、既存患者の満足度を高められます。

待ち時間の短縮

効率的な予約システムの導入や診療プロセスの見直しにより、患者の待ち時間を短縮します。
これは患者満足度に直結する重要な要素です。

設備・環境の改善

必要に応じて医療機器の更新や院内環境の改善を行い、より快適で安全な医療環境を提供します。

新しい医療サービスの提供

専門外来の追加

医療法人のネットワークを活用し、専門医による外来を新たに開設することで、患者により幅広い医療サービスを提供できます。

予防医療の充実

健康診断や人間ドックなどの予防医療サービスを充実させることで、健康意識の高い患者層の獲得と既存患者の健康管理強化を同時に実現できます。

収益安定性の実現

予測可能な収益モデル

確立された患者基盤により、月次・年次の収益予測が高い精度で可能になります。
これにより、以下のような経営上のメリットが生まれます。

資金計画の精度向上

安定した収益見込みにより、設備投資や人員計画などの中長期的な資金計画を精度高く策定できます。

金融機関からの信頼獲得

実績ベースの収益データがあることで、金融機関からの融資や投資家からの出資を受けやすくなります。

まとめ

既存クリニックの買収による患者基盤の継承は、医療法人の事業拡大戦略において最も確実で効果的な方法の一つです。

新規開設に伴うリスクを大幅に軽減し、初月から安定した収益を確保できる価値は、投資効果を考える上で極めて重要です。

適切な患者継承戦略により、買収投資を早期に回収し、持続的な成長基盤を構築することが可能になります。

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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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