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医療法人の多店舗展開での大きなメリット:内装工事費用と工期の劇的削減効果

医療法人の多店舗展開での大きなメリット:内装工事費用と工期の劇的削減効果

既存クリニック買収の10大メリット⑤

医療法人が事業譲渡により事業拡大を検討する際、既存クリニックの買収が新規開設よりも有利な理由として、人材確保や患者基盤の継承、立地リスクの回避などが挙げられることが多くあります。

しかし、実際の買収を経験した経営者が口を揃えて語るのが「内装工事をしなくて済むことの大きさ」です。

この見落とされがちなメリットこそが、買収の経済的効果を大幅に高める重要な要素なのです。

新規開設時の内装工事の実態

クリニックの新規開設において、内装工事は避けて通れない大きな負担となります。
一般的な内科クリニックの場合でも、待合室、受付、診察室、処置室、レントゲン室、薬品庫、スタッフルームなど、多岐にわたる空間の内装が必要です。

具体的な費用を見てみると、30坪程度の一般的なクリニックでも内装工事費は500万円から1,000万円程度が相場となります。
さらに、専門性の高い診療科目や高度な設備を要するクリニックでは、2,000万円を超えるケースも珍しくありません。
特に、感染症対策が重要視される現在では、空調設備や換気システムの充実が求められ、従来以上に工事費用が高騰する傾向にあります。

内装工事の工期についても、従来は設計から完成まで2~3ヶ月から半年程度とされていましたが、近年は建設業界の深刻な人材不足や資材調達の遅延により、4~6ヶ月を要するケースが増加しています。
特に、電気工事や空調工事の専門職人の不足は深刻で、工期延長の主要因となっています。

さらに、海外からの建材輸入遅延や半導体不足による設備機器の納期延長も重なり、当初計画よりも大幅に開院が遅れるリスクが高まっています。
この間、家賃や人件費などの固定費は発生し続けるため、開院が遅れるほど初期投資額は膨らんでいきます。

買収時の内装工事の軽減効果

一方、既存クリニックの買収では、この内装工事の負担を大幅に軽減できます。
前院長が長年使用してきた診療空間は、すでに医療法に適合した仕様で整備されており、基本的な診療機能は完備されています。
買収後に必要となる内装工事は、主に以下のような部分的な改修に限定されます。

看板・サイン工事

クリニック名の変更に伴う外部看板や院内表示の更新が必要ですが、これは50万円程度で済みます。

内装の部分改修

診療方針や専門性に合わせた待合室のレイアウト変更や、診察室の機能向上のための軽微な改修を行う場合でも、100万円から200万円程度の予算で十分対応可能です。

システム更新

電子カルテシステムや予約システムの変更に伴う配線工事が必要な場合がありますが、これも既存の配線設備を活用できるため、新規設置と比較して大幅にコストを抑制できます。

このように、買収時に必要な内装関連費用は総額でも200万円から300万円程度に抑えられることが多く、新規開設時の内装工事費と比較して500万円から1,500万円程度の削減効果が期待できます。

工期短縮による収益機会の早期実現

内装工事費用の削減以上に重要なのが、工期短縮による収益機会の早期実現です。
新規開設では内装工事完了まで収益が発生しませんが、買収では引き継ぎ期間を経て、通常1ヶ月程度で診療を開始できます。

月間売上が1,000万円のクリニックの場合、現在の工期状況を考慮すると3~5ヶ月の工期短縮により3,000万円から5,000万円の売上機会を早期に実現できることになります。
利益率を20%と仮定すると、600万円から1,000万円の利益を早期に確保できる計算です。これは内装工事費削減効果と合わせて、買収の経済的メリットをさらに高める重要な要素となります。

キャッシュフローへの好影響

内装工事の軽減は、医療法人のキャッシュフローにも大きな好影響をもたらします。

新規開設では、開院前に大きな支出が集中し、その後数ヶ月から半年程度は患者数の安定化まで時間を要します。
一方、買収では初期投資を抑制しながら、早期から安定した収益を確保できるため、資金繰りの安定性が格段に向上します。

これにより、次の投資案件への取り組みや、既存クリニックの設備更新など、より戦略的な資金活用が可能になります。
特に複数店舗の展開を計画している医療法人にとって、1店舗あたりの初期投資削減効果は、事業拡大スピードを大幅に加速させる要因となります。

成功のための注意点

ただし、内装関連で注意すべき点もあります。建物の老朽化が進んでいる場合、買収後に予想以上の修繕費が発生する可能性があります。
また、前院長の診療スタイルと大きく異なる運営を行う場合、レイアウト変更が必要になることもあります。

これらのリスクを最小限に抑えるためには、買収前の建物調査において、構造や設備の状況を専門家に詳細に確認してもらうことが重要です。
特に築年数が古い物件では、電気設備や給排水設備の更新時期についても事前に把握しておく必要があります。

まとめ

医療法人の多店舗展開において、既存クリニック買収による内装工事の軽減効果は、単なるコスト削減を超えた戦略的メリットを提供します。

初期投資の大幅削減、工期短縮による早期収益実現、キャッシュフローの安定化など、総合的な事業効果を考慮すると、その価値は計り知れません。

適切な物件選定と事前調査により、このメリットを最大限に活用した効率的な事業拡大を実現できるでしょう。

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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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