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地域医療の継承価値:認知度と信頼という無形資産の戦略的活用②

認知度と信頼という無形資産の戦略的活用②

既存クリニック買収の10大メリット④-2

この記事は、続きとなります。

前の記事は「地域医療の継承価値:認知度と信頼という無形資産の戦略的活用①」こちらから閲覧できます。

買収による信頼継承戦略

スムーズな経営移行

既存クリニックの買収において、地域の信頼を確実に継承するための戦略が重要です。

前院長との連携期間設定

買収後すぐに前院長が完全に退任するのではなく、一定期間は前院長と新院長が連携して診療を行う移行期間を設けることで、患者の不安を軽減し、信頼関係の継承を図ります。

診療方針の継続性確保

地域住民に親しまれてきた診療スタイルや医療方針を急激に変更せず、段階的な改善を行うことで、既存の信頼関係を維持しながら医療の質向上を図ります。

スタッフの継続雇用

患者にとって馴染みのあるスタッフを継続雇用することで、「いつものクリニック」という安心感を維持できます。 受付スタッフや看護師の継続は、患者の心理的安定に大きく寄与します。

地域活動の継承と発展

既存の地域貢献活動継続

前院長が参加してきた地域の健康イベントや学校検診などの活動を継続し、地域コミュニティとの関係を維持します。

新たな地域貢献の追加

既存の活動に加えて、健康講座の開催や予防医療の啓発活動など、新たな地域貢献活動を追加することで、さらなる信頼向上を図ります。

信頼継承の具体的効果

患者継続率の向上

適切な信頼継承戦略により、買収前の患者の85-95%を継続患者として維持することが可能になります。

慢性疾患患者の安定確保

高血圧、糖尿病などの慢性疾患患者は、信頼できる医師との継続的な関係を重視するため、適切な移行により高い継続率を実現できます。

かかりつけ医機能の維持

地域のかかりつけ医としての役割を継続することで、急病時の受診や健康相談など、幅広い医療ニーズに対応し続けることができます。

新患獲得力の維持

紹介患者の継続

既存患者からの紹介により新患を獲得する力を維持できます。
満足している既存患者は、家族や友人に医療機関を紹介する重要な情報源となります。

救急患者の受け入れ

地域で信頼されている医療機関として、救急時や急病時の患者受け入れ先として選択され続けることができます。

ブランド価値の定量化

無形資産の価値算定

地域での認知度と信頼というブランド価値は、以下の方法で定量化できます。

新規開設時との広告費比較

新規開設時に必要な認知度獲得のための広告宣伝費と比較することで、継承したブランド価値を算定できます。
通常、年間広告費の3-5倍の価値があるとされています。

患者獲得コストとの比較

新規患者1人を獲得するのにかかるマーケティングコストと、既存患者基盤の価値を比較することで、ブランド価値を具体的に算定できます。

長期的価値の評価

持続的競争優位性

一度確立された地域での信頼関係は、競合他院が参入してきても容易には崩れない持続的な競争優位性をもたらします。 この持続性こそが、ブランド価値の最も重要な要素です。

事業拡張への基盤

地域での強固な信頼関係は、将来的な診療科目の追加や医療サービスの拡張において、患者からの支持を得やすくする基盤となります。

信頼維持のための継続的取り組み

医療の質向上

継承した信頼を維持し、さらに発展させるためには、継続的な医療の質向上が不可欠です。

最新医療技術の導入

地域医療の水準向上のため、最新の医療機器や治療技術を導入し、患者により良い医療を提供します。

スタッフの継続的教育

医療スタッフの技術向上と知識更新を継続的に行い、地域住民により質の高い医療サービスを提供し続けます。

コミュニケーションの強化

患者との対話重視

患者一人ひとりとの丁寧な対話を重視し、信頼関係をさらに深めていきます。

地域住民との接点拡大

健康相談会や予防医療セミナーなど、診療以外の場面でも地域住民との接点を拡大し、信頼関係を多面的に強化します。

まとめ

既存クリニックの買収による地域での認知度と信頼の継承は、金銭では測れない極めて貴重な無形資産の獲得を意味します。
この資産は、新規開設では何年もかけて構築しなければならないものを、即座に手に入れることを可能にします。

適切な継承戦略により、この貴重な資産を維持・発展させることで、持続的な競争優位性と安定した事業運営を実現できるでしょう。

地域医療における信頼関係の価値を正しく理解し、それを最大限に活用することが、医療法人の成功に向けた重要な鍵となります。

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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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